労災保険の特別加入制度とは
適用事業所に使用される労働者であって、賃金を受ける者は全て労災保険の適用をうけますが、「中小事業主」、「自営業者」、「家族従事者」などの労働者以外の方は、労災保険の対象者になりません。
しかし、「中小事業者」などの方の中には、その業務の実態や災害の発生状況などからみて、労働者に準じて保護を与えるにふさわしい方がいます。これらの方を、労災保険の適用労働者とみなして、業務災害及び通勤災害について保険給付等を行うのが特別加入制度です。
特別加入制度の種類について
特別加入することができる方は次の3種類に分類されます。
第1種特別加入『中小事業主等』
社長、役員、家族従事者の方でも労災保険に加入できます。
第2種特別加入『一人親方等』
一人親方やその他の自営業者、及び、その事業に従事する方も労災保険に加入できます。
第3種特別加入『海外派遣者』
海外へ派遣された方も労災保険に加入できます。
第1種特別加入『中小事業主等』について
特別加入することができる中小事業主等の範囲
中小事業主等の方とは、下記の表に定める数以下の労働者を常時使用する事業主の方、及び労働者以外で当該事業に従事する(事業主の家族従事者や、法人の役員など)方をいいます。
業種 | 労働者数 |
金融業・保険業・不動産業・小売業 | 50人以下 |
卸売業・サービス業 | 100人以下 |
上記以外の業種 | 300人以下 |
※継続して労働者を使用していない場合であっても、1年間に100日以上にわたり労働者を使用している場合には、常時労働者を使用しているものとして取り扱われます。
中小事業主等に該当する場合の加入要件
中小事業主等に該当する方が特別加入するためには、
➀雇用する労働者について労働保険関係が成立していること。
➁労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること。
➂中小事業主を含めて、その事業に従事する家族従事者などの方全員を包括して特別加入すること。
の3つの要件をすべて満たすことが必要です。
特別加入時の健康診断
特別加入を希望する中小事業主等の方のうち、下記の表に記載されている「特別加入予定者の業務の種類」欄に応じて、それぞれの従事期間を超えて当該事業を行ったことがある場合には、特別加入の申請を行う際に健康診断を受ける必要があります。
特別加入時に健康診断の対象となる方は、労働局から指定された期間内に指示された診断実施機関で健康診断を受ける必要があります。なお、この場合の健康診断に要する費用は無料です。ただし、受診のために要した交通費は自己負担となります。
特別加入予定者の業務の種類 | 特別加入前に左記の業務に 従事した期間(通算機関) |
実施すべき健康診断 |
粉じん作業を行う業務 | 3年以上 | じん肺健康診断 |
振動工具使用の業務 | 1年以上 | 振動障害健康診断 |
鉛業務 | 6箇月以上 | 鉛中毒健康診断 |
有機溶剤業務 | 6箇月以上 | 有機溶剤中毒健康診断 |
特別加入が制限される場合
加入時健康診断を受けた結果、次のような場合には特別加入が制限されます。
➀特別加入予定者がすでに疾病にかかっていて、その症状または障害の程度が一般的に就業することが困難であって、療養に専念しなければならないと認められる場合には、従事する業務の内容にかかわらず特別加入は認められません。
➁特別加入予定者がすでに疾病にかかっていて、その症状または障害の程度が特定の業務からの転換を必要とすると認められる場合には、特定業務以外の業務についてのみ特別加入が認められることとなります。
特別加入の給付基礎日額
給付基礎日額は特別加入保険料の算定及び保険給付額の算定の基礎となるものです。
特別加入の給付基礎日額は、3,500円、4,000円から1,000円毎に10,000円まで、及び12,000円から2,000円毎に24,000円までのほか、最高25,000円と合計16段階が定められていて、この中から特別加入を行う方の所得水準に見合った適切な額を申請して、都道府県労働局長が承認した額がその方の給付基礎日額となります。
なお、承認された給付基礎日額は、前年度の3月18日~3月31日の間、または、労働保険年度更新期間と同じ
6月1日~7月10日までの間に「保険料申告書内訳」または「給付基礎日額変更申請書」を提出することにより変更することができます。
特別加入の保険料
特別加入者の保険料については、保険料算定基礎額(給付基礎日額に365を乗じたもの)にそれぞれの事業に定められた保険料率(第1種特別加入保険料率)を乗じたものになります。
給付基礎日額 | 保険料算定基礎額 | 保険料 【例】建設業(既設建築物 設備工事業)の場合 保険料率15/1000 |
保険料 【例】卸売業・小売業 飲食店の場合 保険料率3.5/1000 |
3,500円 | 1,277,500円 | 年19,155円 / 月1,597円 | 年4,470円 / 月373円 |
4,000円 | 1,460,000円 | 年21,900円 / 月1,825円 | 年5,110円 / 月426円 |
5,000円 | 1,825,000円 | 年27,375円 / 月2,282円 | 年6,388円 / 月533円 |
6,000円 | 2,190,000円 | 年32,850円 / 月2,738円 | 年7,665円 / 月639円 |
7,000円 | 2,555,000円 | 年38,325円 / 月3,194円 | 年8,943円 / 月746円 |
8,000円 | 2,920,000円 | 年43,800円 / 月33,650円 | 年10,220円 / 月852円 |
9,000円 | 3,285,000円 | 年49,275円 / 月4,107円 | 年11,498円 / 月959円 |
10,000円 | 3,650,000円 | 年54,750円 / 月4,563円 | 年12,775円 / 月1,065円 |
12,000円 | 4,380,000円 | 年65,700円 / 月5,475円 | 年15,330円 / 月1,278円 |
14,000円 | 5,110,000円 | 年76,650円 / 月6,388円 | 年17,885円 / 月1,491円 |
16,000円 | 5,840,000円 | 年87,600円 / 月7,300円 | 年20,440円 / 月1,704円 |
18,000円 | 6,570,000円 | 年98,550円 / 月8,213円 | 年22,995円 / 月1,917円 |
20,000円 | 7,300,000円 | 年109,500円 / 月9,125円 | 年25,550円 / 月2,130円 |
22,000円 | 8,030,000円 | 年120,450円 / 月10,038円 | 年28,105円 / 月2,343円 |
24,000円 | 8,760,000円 | 年131,400円 / 月10,950円 | 年30,660円 / 月2,555円 |
25,000円 | 9,125,000円 | 年136,875円 / 月11,407円 | 年31,938円 / 月2,662円 |
※保険料算定基礎額=給付基礎日額×365日
※年間保険料=保険料算定基礎額×保険料率
年度途中において、新たに特別加入者となった場合や特別加入者でなくなった場合には、当該年度内の特別加入月数(1箇月未満の端数があるときには、これを1箇月とします。)に応じた保険料算定基礎額により保険料を算出することとなります。
特別加入の保険給付・特別支給金の種類
特別加入者が業務災害または通勤災害により被災した場合には、所定の保険給付の他に、これと併せて特別支給金が支給されます。
保険給付の種類 (注1) |
支給事由 | 給付内容 | 特別支給金 | 具体的な例 (給付基礎日額 が1万円の場合) |
療養補償給付
療養給付 |
業務災害または
通勤災害による 傷病について、 病院等で治療す る場合 |
労災病院または労災
指定病院等において 必要な治療が無料で 受けられます。また 、労災病院または労 災指定病院等以外の 病院において治療を 受けた場合には、治 療に要した費用が支 給されます。 (注2) |
特別支給金は
ありません。 |
(給付基礎日額と
は関係なく)必要 な治療が無料で 受けられます。 |
休業補償給付
休業給付 |
業務災害または
通勤災害による 傷病の療養のた め労働すること ができない日が 4日以上となっ た場合 (注3) |
休業4日目以降、休
業1日につき給付基 礎日額の60%相当 額が支給されます。 |
休業特別支給金
休業4日目以降 休業1日につき 給付基礎日額の 20%相当額を 支給。 |
(20日間休業し
た場合) ➀休業(補償) 給付 1万円×60%× (20日‐3日) =10万2千円 ➁休業(補償) 特別支給金 1万円×20%× (20日-3日) =3万4千円 |
障害補償給付
障害給付 |
障害(補償)年金
業務災害または 障害(補償) 業務災害または |
障害(補償)年金
の場合 第1級は給付基礎日 障害(補償)一時金 第8級は給付基礎日 |
障害特別支給金
第1級342万円 ~第14級8万円 を一時金として 支給。 |
(第1級の場合)
➀障害(補償) 年金 1万円×313日 =313万円 ➁障害特別 支給金(一時金) 342万円 |
傷病補償年金
傷病年金 |
業務災害または
通勤災害による 傷病が療養開始 後1年6箇月を 経過した日また は同日後におい て ➀傷病が治って いないこと ➁傷病による障 害の程度が傷病 等級に該当する ことのいずれに も該当する場合 |
第1級は給付基礎日
額の313日分 第2級は給付基礎日 額の277日分 第3級は給付基礎日 額の245日分が支 給されます。 |
傷病特別支給金
第1級は114万円 第2級は107万円 第3級は100万円 を一時金として 支給。 |
(第1級の場合)
➀傷病(補償) 年金 1万円×313日 =313万円 ➁傷病特別 支給金(一時金) 114万円 |
遺族補償給付
遺族給付 |
遺族(補償)年金
業務災害または 遺族(補償) ➀遺族(補償)年 |
遺族(補償)年金
の場合 遺族の人数によって 遺族(補償)一時金 左欄の➀の場合 |
遺族特別支給金
300万円を一時 金として支給 |
遺族(補償)年金
で遺族が4人の 場合 ➀遺族(補償) 年金 1万円×245日 =245万円 ➁遺族特別 支給金(一時金) 300万円 遺族(補償) ➀で遺族が4人 |
葬祭料
葬祭給付 |
業務災害または
通勤災害により 死亡した方の葬 を行う場合 |
31万5千円に給付
基礎日額の30日分 を加えた額または 給付基礎日額の60 日分のいずれか高い 方が支給されます。 |
特別支給金は
ありません。 |
➀31万5千円
+(1万円×30日) =61万5千円 ➁1万円×60日 =60万円 よって、高い額 の➀が支払われ ます。 |
介護補償給付
介護給付 |
業務災害または
通勤災害により 障害(補償)年金 または傷病(補 償)年金を受給し ている方のうち 一定の障害を有 する方で現に介 護を受けている 場合 |
介護の費用として支
出した額(上限額があ ります)が支給されま す。 親族等の介護を受け ている方で、介護の 費用を支出していな い場合または支出し た額が最低保証額を 下回る場合は一律に その最低保証額が支 給されます。 上限額および最低保 障額は、常時介護と 随時介護の場合で異 なります。 |
特別支給金は
ありません。 |
常時介護を
要する者 最高限度額 104,290円 最低保証額 56,600円 随時介護を |
(注1)「保険給付の種類」欄の上段は業務災害、下段は通勤災害に対して支給される保険給付の名称です。
(注2)原則、給付の範囲は健康保険に準拠しています。
(注3)休業(保障)給付については、特別加入者の場合所得喪失の有無にかかわらず、療養のため補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務または作業について全部労働不能であることが必要となっています。全部労働不能とは、入院中または自宅就床加療中もしくは通院加療中であって、補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務または作業ができない状態をいいます。
(注4)遺族(保障)年金の受給資格者である遺族が1人であり、55歳以上または一定の障害状態にある妻の場合には、給付基礎日額の175日分が支給されます。
補償の対象になる範囲
特別加入いている方は、業務災害または通勤災害を被った場合に労災保険から給付が行われます。
ただし、同一の中小事業主の方が2つ以上の事業の事業主となっている場合、1つの事業の中小事業主として特別加入の承認を受けていても、他の事業の業務により被災した場合は、保険給付を受けることができないことになっています。
業務災害の認定 判断基準
中小事業主等の特別加入者の業務災害の認定は、特別加入申請書記載の業務または作業の内容を基礎として厚生労働省労働基準局長の定める基準によります。
保険給付の対象となる災害は、労働者の場合と異なり、一定の業務を行っていた場合(業務遂行性)に限られています。したがって、下記に該当しない場合には、被災しても保険給付を受けることができませんので注意が必要です。
また、災害がその業務にによって生じたものであるかどうか(業務起因性)の判断は労働者の場合に準じることとされています。
就業中の災害であって、下記のいずれかに該当する場合に保険給付が行われます。
➀特別加入申請書の「業務の内容」欄に記載された労働者の所定労働時間(休憩時間を含みます。)内に特別加入申請した事業のためにする行為およびこれに直接附帯する行為(準備・後始末行為、必要行為など)を行う場合(ただし、例えば株主総会や役員会などに出席している場合のようにその行為が事業主の立場において行われる業務を除きます。)
➁労働者の時間外労働または休日労働に応じて就業する場合。
➂労働者の就業時間(時間外労働を含みます。)に前後して行われる業務(準備・後始末行為を含みます。)を中小事業主等のみで行う場合。
➃労働者の就業時間内における事業場施設の利用中および事業場施設内で行動中の場合。
➄事業の運営に直接必要な業務(事業主の立場で行われる業務を除きます。)のために出張する場合。
➅通勤途上で次の場合
(a)労働者の通勤用に事業主が提供する交通機関の利用中
(b)突発事故(台風、火災など)による予定外の緊急の出勤途上
➆事業の運営に直接必要な運動競技会、その他の行事について労働者(業務遂行性が認められる者)を伴って出席する場合。
通勤災害の認定 判断基準
通勤災害については、一般労働者の場合と同様に取り扱われます。
労災保険法上の通勤とは、就業に関して、➀住居と就業の場所との間の往復 ➁就業の場所から他の就業の場所への移動 ➂赴任先住居と帰省先住居との間の移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有する者を除くものをいいます。
また、これらの移動の経路を逸脱・中断した場合は、その逸脱・中断の間及びその後の移動は通勤となりません。ただし、その逸脱・中断が、日常生活上必要な行為であって日用品の購入などをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合は、合理的な経路に戻った後の移動は通勤となります。
支給制限
特別加入者が業務災害または通勤災害を被った場合には保険給付が行われますが、その災害が特別加入者の故意または重大な過失によって発生した場合場合や保険料の滞納期間中の生じた場合には、支給制限(全部または一部)が行われることがあります。
特別加入者としての地位の消滅
1.脱退により消滅する場合
特別加入者は、労働局長の承認を受けて脱退することができますが、この脱退の申請は、中小事業主と労働者以外の方でその事業に従事する方全員を包括して行わなければなりません。この場合には、労働保険事務組合を通じて監督署長を経由して労働局長に対して「特別加入脱退申請書」を提出し、承認を受けることが必要です。
特別加入の脱退申請に対する労働局長の承認は、脱退申請の日から起算して30日の範囲内において脱退を申請する方が脱退を希望する日となります。
2.自動的に消滅する場合
中小事業主等の特別加入は、その使用する労働者について成立している保険関係を前提として認められるものですから、この保険関係が消滅したときは、その消滅の日に特別加入者としての地位も消滅します。
中小事業主が事業を廃止または終了した場合には、その廃止または終了の日の翌日に特別加入者としての地位が消滅します。
労働保険事務組合に労働保険の事務処理を委託している中小事業主が委託を解除した場合は、その解除の日に特別加入者としての地位が消滅します。
3.承認取消により消滅する場合
中小事業主が関係法令の規定に違反した場合には、特別加入の承認が取り消される場合があります。
業務を委託するメリット
第2種特別加入『一人親方等』について
特別加入することができる一人親方等の範囲
一人親方等の方とは、労働者を使用しないで事業を行うことを状態とする一人親方、その他の自営業者、及び、その事業に従事する方のうち、主に下記の種類の事業を行う方が特別加入の対象となります。
※労働者を使用する場合でも、労働者を使用する日の合計が1年間に100日未満であれば加入できます。
➀自動車を使用して行う旅客または貨物の運送の事業を行う方(個人タクシー業者や個人貨物運送業者など)
➁建設の事業を行う方(大工、左官、とびの方など)
➂漁船による水産動植物の採捕の事業を行う方(漁船に乗り組んでその事業を行う方に限ります。)
➃林業の事業を行う方
➄医薬品の配置販売(薬事法第30条の許可を受けて行う医薬品の配置販売業をいいます。)の事業を行う方
➅再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等を事業を行う方
➆船員法第1条に規定する船員が行う事業
一人親方等に該当する場合の加入要件
一人親方等に該当する方が特別加入するためには、
➀加入しようとする一人親方等が、団体の構成員となっていること。
➁同種の事業または同種の作業について重ねて特別加入するものではないこと。(異種の事業または作業について重ねて特別加入することは差し支えないです。)
特別加入時の健康診断
特別加入を希望する一人親方等の方のうち、下記の表に記載されている「特別加入予定者の業務の種類」欄に応じて、それぞれの従事期間を超えて当該事業を行ったことがある場合には、特別加入の申請を行う際に健康診断を受ける必要があります。
特別加入時に健康診断の対象となる方は、労働局から指定された期間内に指示された診断実施機関で健康診断を受ける必要があります。なお、この場合の健康診断に要する費用は無料です。ただし、受診のために要した交通費は自己負担となります。
特別加入予定者の業務の種類 | 特別加入前に左記の業務に 従事した期間(通算機関) |
実施すべき健康診断 |
粉じん作業を行う業務 | 3年以上 | じん肺健康診断 |
振動工具使用の業務 | 1年以上 | 振動障害健康診断 |
鉛業務 | 6箇月以上 | 鉛中毒健康診断 |
有機溶剤業務 | 6箇月以上 | 有機溶剤中毒健康診断 |
特別加入が制限される場合
加入時健康診断を受けた結果、次のような場合には特別加入が制限されます。
➀特別加入予定者がすでに疾病にかかっていて、その症状または障害の程度が一般的に就業することが困難であって、療養に専念しなければならないと認められる場合には、従事する業務の内容にかかわらず特別加入は認められません。
➁特別加入予定者がすでに疾病にかかっていて、その症状または障害の程度が特定の業務からの転換を必要とすると認められる場合には、特定業務以外の業務についてのみ特別加入が認められることとなります。
業務災害の防止に関する措置
一人親方等の団体をつくる際は、あらかじめ業務災害の防止のための措置や一人親方等が守るべき事項を定めておかなければなりません。これらによって、自主的に業務災害防止に努めていただくことになります。
特別加入の給付基礎日額
給付基礎日額は特別加入保険料の算定及び保険給付額の算定の基礎となるものです。
特別加入の給付基礎日額は、3,500円、4,000円から1,000円毎に10,000円まで、及び12,000円から2,000円毎に24,000円までのほか、最高25,000円と合計16段階が定められていて、この中から特別加入を行う方の所得水準に見合った適切な額を申請して、都道府県労働局長が承認した額がその方の給付基礎日額となります。
なお、承認された給付基礎日額は、前年度の3月18日~3月31日の間、または、労働保険年度更新期間と同じ
6月1日~7月10日までの間に「保険料申告書内訳」または「給付基礎日額変更申請書」を提出することにより変更することができます。
特別加入の保険料
特別加入者の保険料については、保険料算定基礎額(給付基礎日額に365を乗じたもの)にそれぞれの事業に定められた保険料率(第2種特別加入保険料率)を乗じたものになります。
給付基礎日額 | 保険料算定基礎額 | 保険料 【例】建設の事業の場合 保険料率19/1000 |
保険料 【例】個人タクシー 事業の場合 保険料率14/1000 |
3,500円 | 1,277,500円 | 年24,263円 / 月2,022円 | 年17,878円 / 月1,490円 |
4,000円 | 1,460,000円 | 年27,740円 / 月2,312円 | 年20,440円 / 月1,704円 |
5,000円 | 1,825,000円 | 年34,675円 / 月2,890円 | 年25,550円 / 月2,130円 |
6,000円 | 2,190,000円 | 年41,610円 / 月3,468円 | 年30,660円 / 月2,555円 |
7,000円 | 2,555,000円 | 年48,545円 / 月4,046円 | 年35,770円 / 月2,981円 |
8,000円 | 2,920,000円 | 年55,480円 / 月4,624円 | 年40,880円 / 月3,407円 |
9,000円 | 3,285,000円 | 年62,415円 / 月5,202円 | 年45,990円 / 月3,833円 |
10,000円 | 3,650,000円 | 年69,350円 / 月5,780円 | 年51,100円 / 月4,259円 |
12,000円 | 4,380,000円 | 年83,220円 / 月6,935円 | 年61,320円 / 月5,110円 |
14,000円 | 5,110,000円 | 年97,090円 / 月8,091円 | 年71,540円 / 月5,962円 |
16,000円 | 5,840,000円 | 年110,960円 / 月9,247円 | 年81,760円 / 月6,814円 |
18,000円 | 6,570,000円 | 年124,830円 / 月10,403円 | 年91,980円 / 月7,665円 |
20,000円 | 7,300,000円 | 年138,700円 / 月11,559円 | 年102,200円 / 月8,517円 |
22,000円 | 8,030,000円 | 年152,570円 / 月12,715円 | 年112,420円 / 月9,369円 |
24,000円 | 8,760,000円 | 年166,440円 / 月13,870円 | 年122,640円 / 月10,220円 |
25,000円 | 9,125,000円 | 年173,375円 / 月14,448円 | 年127,750円 / 月10,646円 |
※保険料算定基礎額=給付基礎日額×365日
※年間保険料=保険料算定基礎額×保険料率
年度途中において、新たに特別加入者となった場合や特別加入者でなくなった場合には、当該年度内の特別加入月数(1箇月未満の端数があるときには、これを1箇月とします。)に応じた保険料算定基礎額により保険料を算出することとなります。
第2種特別加入保険料率表(平成27年2月現在)
特別加入の種類 | 料率 |
自動車を使用して行う旅客または貨物の運送の事業 | 14/1000 |
建設の事業 | 19/1000 |
漁船による水産動植物の採捕の事業 | 45/1000 |
林業の事業 | 52/1000 |
医薬品の配置販売の事業 | 7/1000 |
再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体などの事業 | 13/1000 |
船員法第1条に規定する船員が行う事業 | 50/1000 |
特別加入の保険給付・特別支給金の種類
特別加入者が業務災害または通勤災害により被災した場合には、所定の保険給付の他に、これと併せて特別支給金が支給されます。
保険給付の種類 (注1) |
支給事由 | 給付内容 | 特別支給金 | 具体的な例 (給付基礎日額 が1万円の場合) |
療養補償給付
療養給付 |
業務災害または
通勤災害による 傷病について、 病院等で治療す る場合 |
労災病院または労災
指定病院等において 必要な治療が無料で 受けられます。また 、労災病院または労 災指定病院等以外の 病院において治療を 受けた場合には、治 療に要した費用が支 給されます。 (注2) |
特別支給金は
ありません。 |
(給付基礎日額と
は関係なく)必要 な治療が無料で 受けられます。 |
休業補償給付
休業給付 |
業務災害または
通勤災害による 傷病の療養のた め労働すること ができない日が 4日以上となっ た場合 (注3) |
休業4日目以降、休
業1日につき給付基 礎日額の60%相当 額が支給されます。 |
休業特別支給金
休業4日目以降 休業1日につき 給付基礎日額の 20%相当額を 支給。 |
(20日間休業し
た場合) ➀休業(補償) 給付 1万円×60%× (20日‐3日) =10万2千円 ➁休業(補償) 特別支給金 1万円×20%× (20日-3日) =3万4千円 |
障害補償給付
障害給付 |
障害(補償)年金
業務災害または 障害(補償) 業務災害または |
障害(補償)年金
の場合 第1級は給付基礎日 障害(補償)一時金 第8級は給付基礎日 |
障害特別支給金
第1級342万円 ~第14級8万円 を一時金として 支給。 |
(第1級の場合)
➀障害(補償) 年金 1万円×313日 =313万円 ➁障害特別 支給金(一時金) 342万円 |
傷病補償年金
傷病年金 |
業務災害または
通勤災害による 傷病が療養開始 後1年6箇月を 経過した日また は同日後におい て ➀傷病が治って いないこと ➁傷病による障 害の程度が傷病 等級に該当する ことのいずれに も該当する場合 |
第1級は給付基礎日
額の313日分 第2級は給付基礎日 額の277日分 第3級は給付基礎日 額の245日分が支 給されます。 |
傷病特別支給金
第1級は114万円 第2級は107万円 第3級は100万円 を一時金として 支給。 |
(第1級の場合)
➀傷病(補償) 年金 1万円×313日 =313万円 ➁傷病特別 支給金(一時金) 114万円 |
遺族補償給付
遺族給付 |
遺族(補償)年金
業務災害または 遺族(補償) ➀遺族(補償)年 |
遺族(補償)年金
の場合 遺族の人数によって 遺族(補償)一時金 左欄の➀の場合 |
遺族特別支給金
300万円を一時 金として支給 |
遺族(補償)年金
で遺族が4人の 場合 ➀遺族(補償) 年金 1万円×245日 =245万円 ➁遺族特別 支給金(一時金) 300万円 遺族(補償) ➀で遺族が4人 |
葬祭料
葬祭給付 |
業務災害または
通勤災害により 死亡した方の葬 を行う場合 |
31万5千円に給付
基礎日額の30日分 を加えた額または 給付基礎日額の60 日分のいずれか高い 方が支給されます。 |
特別支給金は
ありません。 |
➀31万5千円
+(1万円×30日) =61万5千円 ➁1万円×60日 =60万円 よって、高い額 の➀が支払われ ます。 |
介護補償給付
介護給付 |
業務災害または
通勤災害により 障害(補償)年金 または傷病(補 償)年金を受給し ている方のうち 一定の障害を有 する方で現に介 護を受けている 場合 |
介護の費用として支
出した額(上限額があ ります)が支給されま す。 親族等の介護を受け ている方で、介護の 費用を支出していな い場合または支出し た額が最低保証額を 下回る場合は一律に その最低保証額が支 給されます。 上限額および最低保 障額は、常時介護と 随時介護の場合で異 なります。 |
特別支給金は
ありません。 |
常時介護を
要する者 最高限度額 104,290円 最低保証額 56,600円 随時介護を |
(注1)「保険給付の種類」欄の上段は業務災害、下段は通勤災害に対して支給される保険給付の名称です。
(注2)原則、給付の範囲は健康保険に準拠しています。
(注3)休業(保障)給付については、特別加入者の場合所得喪失の有無にかかわらず、療養のため補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務または作業について全部労働不能であることが必要となっています。全部労働不能とは、入院中または自宅就床加療中もしくは通院加療中であって、補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務または作業ができない状態をいいます。
(注4)遺族(保障)年金の受給資格者である遺族が1人であり、55歳以上または一定の障害状態にある妻の場合には、給付基礎日額の175日分が支給されます。
補償の対象になる範囲
特別加入いている方は、業務災害または通勤災害を被った場合に労災保険から給付が行われます。
業務災害の認定 判断基準
保険給付の対象となる災害は、加入対象に応じて下記の業務を行っていた場合(業務遂行性)に限られています。
また、災害がその業務によって生じたものであるかどうか(業務起因性)の判断は労働者の場合に準じることとされています。
1.個人タクシー業者、個人貨物運送業者
➀免許などを受けた事業の範囲内において事業用自動車を運転する作業(運転補助作業を含みます。)、貨物の積み卸し作業およびこれらに直接付帯する行為を行う場合
➁台風、火災などの突発事故により予定外に緊急の出勤を行う場合
2.建設業の一人親方等
➀請負契約に直接必要な行為を行う場合
➁請負工事現場における作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合
➂請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場において行う場合
➃請負工事に関する機械や製品を運搬する作業(手工具類程度のものを携行して通勤する場合を除きます。)およびこれに直接附帯する行為を行う場合
➄台風、火災などの突発事故により予定外に緊急の出勤を行う場合
3.漁船による自営漁業者
➀水産動植物の採捕の、これに直接必要な用船中の作業およびこれらに直接附帯する行為を行う場合
➁最終の発地から漁船まで、または漁船から最初の着地までの間において行為を行う場合
➂突発事故により予定外に緊急の出勤を行う場合
4.林業の一人親方等
➀森林の中の作業地、木材の搬出のための作業路およびこれに前後する土場における作業並びにこれに直接附帯する行為を行う場合
➁作業のための準備・後始末、機械等の保管、作業の打ち合せなどを通常行っている場所における作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合
➂集合解散場所と森林の中の作業地の間の移動およびこれに直接附帯する行為を行う場合
➃作業に使用する大型の機械等を運搬する作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合
➄台風、火災などの突発事故による緊急用務のために作業地または集合解散場所に赴く場合
5.医薬品の配置販売業者
➀住居を出た後の最初の用務先からその日の最後の用務先までの間に行う医薬品の配置販売業務(医薬品の仕入れを含みます)およびこれに直接附帯する行為並びに医薬品の配置販売業務(医薬品の仕入れを含みます)を行うために出張する場合(住居以外の施設における宿泊を伴う場合に限ります)
6.再生資源取扱業者
➀再生資源を収集、運搬、選別、解体するなどの作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合
➁再生資源を収集、運搬するために行われるトラックなどの貨物運搬用車両などを運転または操作する作業およびこれらに直接附帯する行為を行う場合
➂台風、火災などの突発事故による緊急用務のために、再生資源の集積場所などに赴く場合
7.船員法第1条に規定する船員
➀船員法の適用のある船舶に乗り組んでいる場合(恣意的行為など積極的な私的行為を除きます)
➁台風、火災などの突発事故により予定外に緊急の出勤を行う場合
➂下船後における旅客の乗降のための作業および、荷下ろしなどの作業または出荷のための作業など事業のためにする行為に直接附帯する作業についても、事業の性質に応じて業務遂行性が認められることがあります。
通勤災害の認定 判断基準
通勤災害については、一般労働者の場合と同様に取り扱われます。
ただし、上記のうち下記の一人親方等については、住居と就業の場所との間の往復の実態が明確ではないことなどから、通勤災害の保護の対象となっていません。
➀個人タクシー業者および個人貨物運送業者
➁漁船による自営漁業者
労災保険法上の通勤とは、就業に関して、➀住居と就業の場所との間の往復 ➁就業の場所から他の就業の場所への移動 ➂赴任先住居と帰省先住居との間の移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有する者を除くものをいいます。
また、これらの移動の経路を逸脱・中断した場合は、その逸脱・中断の間及びその後の移動は通勤となりません。ただし、その逸脱・中断が、日常生活上必要な行為であって日用品の購入などをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合は、合理的な経路に戻った後の移動は通勤となります。
支給制限
特別加入者が業務災害または通勤災害を被った場合には保険給付が行われますが、その災害が特別加入者の故意または重大な過失によって発生した場合場合や保険料の滞納期間中の生じた場合には、支給制限(全部または一部)が行われることがあります。
特別加入者としての地位の消滅
1.脱退により消滅する場合
一人親方等の団体は、労働局長の承認を受けて脱退することができますが、この脱退の申請は、その団体の構成員全員を包括して行わなければなりません。この場合、その団体は、監督署長を経由して労働局長に対して「特別加入脱退申請書」を提出し、承認を受けることが必要です。
特別加入の脱退申請に対する労働局長の承認は、脱退申請の日から起算して30日の範囲内において脱退を申請する方が脱退を希望する日となります。
2.自動的に消滅する場合
一人親方等が特別加入者としての要件を満たさなくなったときは、その日に特別加入者としての地位が消滅します。
一人親方等が特別加入団体の構成員でなくなったときは、その日に特別加入者としての地位が消滅します。
一人親方等の団体が解除したときは、その解散の日の翌日に特別加入者としての地位が消滅します。
3.承認取消により消滅する場合
一人親方等の団体が関係法令の規定に違反した場合には、特別加入の承認が取り消される場合があります。
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